マージン評価は肉眼評価、顕微鏡評価の2段階で行っています。それは組織作製過程において様々なアーチファクトが加わり、偽りのマージン(+)もしくは(-)が形成されることがあるからです。例えば割により偽膜が剥離していた場合、組織の面出し不良の場合等々、腫瘍が露出しているため情報がなければマージン偽(+)ということになります(左写真)。弊社では肉眼評価と組織評価で矛盾が生じた場合には、診断医と切り出し担当者が協議し、評価ミスを未然に防ぎます。また標本作製中に腫瘍の偽膜がずれるなどしても顕微鏡上では把握が困難です。そのためそのような危険がある場合には、墨で偽膜をマーキングするなどの手法も通常の作業として取り入れています(右写真)。
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薄切作業はテクニシャンによって行われています。しかし、すべてをテクニシャンに任せるのではなく、包埋の方向が重要な場合、薄切する深さが重要な場合、深さを変えた標本が数枚必要な場合などには組織をブルーのカセットに入れ、獣医師が直接標本作製作業に携わり、診断リスクを避けています。
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顕微鏡上でどんなに厳密に評価したとしても、切り出しの部位や数が不適切で、腫瘍全体の悪性度やマージンを反映していなければ台無しです。切り出しが50点であれば、50点以上の報告書は作製できません。そのため弊社では診断医と切り出し担当者(獣医師)の検討会を日々繰り返しています。
一日の症例の中で、診断にさほど苦労しない症例とそうではない症例があります。動物病院でも一緒と思います。後者の場合には2名の診断医によるダブルチェック、免疫染色や特殊染色などを用いた検索を行います。場合により大学での検討も行います。特に臨床的対処法や予後に違いが生じる疾患が鑑別に挙がる場合には可能な限り鑑別を試みます。これらに違いが生じない場合には、診断名にこだわらないのが、むしろこだわりということになります。