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第81回 肥満細胞腫と軟部組織肉腫の完全切除に影響する因子



肥満細胞腫と軟部組織肉腫の完全切除に影響する因子
Factors influencing complete tumor exision of mast cell tumors and soft tissue sarcomas : A retrospective study in 100 dogs

軟部組織肉腫と肥満細胞腫は外科的に完全摘出することが推奨されている。この研究では100頭のイヌの皮膚と皮下に発生した軟部組織肉腫と肥満細胞腫に対して、広範囲切除による治癒を目的とした外科手術を実施した際に、不完全切除となる危険因子について検討した。

症例;イヌの皮膚もしくは皮下に発生した軟部組織肉腫23例、肥満細胞腫77例
    メス2頭、避妊メス58頭、去勢オス40頭
    平均年齢7.8歳(0.75-15歳)
    平均体重27.7kg(3.8-65kg)

治癒を目的とした広範囲切除(水平方向マージン3cm、筋膜1枚)を実施した。病理検査により、切除縁から5mm以内に腫瘍細胞が認められたもの(1-5mmに腫瘍細胞が認められる“clan but close“を含む)を「不完全切除」、切除縁から5mm以内に腫瘍細胞が見られないものを「完全切除」と判定した。

結果;48%(肥満細胞腫35例、軟部組織肉腫13例)は完全切除
    52%(肥満細胞腫42例、軟部組織肉腫10例)は不完全切除
 不完全切除のうち、肥満細胞腫6例、軟部組織肉腫1例は切除縁から1-5mmに腫瘍細胞が認められる“clean but close”
腫瘍の大きさは平均26.2cm2(0.25-600cm2)
組織学的グレードは 肥満細胞 Grade I 28%, II 58%, III 14% 20例不明
軟部組織肉腫 Grade I 68%, II 21%, III 10.5% 4例不明

体重が軽いイヌでは不完全切除となる確率が高くなった。
(体重が1kg増えるごとに、不完全切除の危険性が4%低くなる)
また腫瘍のサイズが大きくなるごとに不完全切除となる確率が高くなった。
(腫瘍が1cm2大きくなるごとに不完全切除の危険性が1.4%高くなる)

腫瘍の種類やグレードに関わらず、腫瘍のサイズが大きくなると不完全切除となる危険が高くなった。(別の報告では軟部組織肉腫も肥満細胞腫も、腫瘍サイズが再発と転移の予後因子となるという結果もある)
今回のデータでは、性別、品種、年齢、発生部位、腫瘍の種類、組織学的グレード、また腫瘍が再発病変であるか否かはいずれも不完全切除の危険因子とはならなかった。
腫瘍サイズが大きいこと、体重が軽いことは不完全切除となりやすいことが示された。

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この報告は、外科手術後実際に再発を起こしたか否かではなく、病理検査で組織学的にどのようなマージン評価となったかを基準に分類/考察したものです。軟部組織肉腫の種類についての詳しい内訳は示されていません。今回の文献では不完全切除の概念や基準が弊社のものとは異なりますので、単純に比較は出来ませんが、参考にはなるかと思います。
弊社では、マージンの表記に(+)か(-)以外にも、マージン微妙、マージン(-)だがマージン部付近まで腫瘍細胞が認められる、などの表現を用いています。これら評価の基準は、腫瘍の種類、悪性度、境界の不明瞭さなどによって変化させています。

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