第215回 直腸形質細胞腫その1
第215回 直腸形質細胞腫
直腸での発生に限定した形質細胞腫瘍の報告が出ましたので、それについて要約を記載させて頂こうともいます。今までは直腸に発生した形質細胞腫瘍に関しても、胃腸管の形質細胞腫瘍としてご報告書にコメントしてきましたが、直腸に発生したものはそれに比べて大人しい臨床挙動を示しており、これからはそのコメントに差し替えていきます。
また今回の報告では今までの報告よりも再発・転移率が高いと記載されていますが、それは著者が皮膚や粘膜を含む髄外性形質細胞腫(その多くは皮膚形質細胞腫)と比較しているためと考えられます。
【概要】
追跡が可能であった20匹の犬が評価されました。19例は外科的治療を受け、1例は保存的治療(鎮痛とモニタリング)であった。転移性病変は20匹中2匹(10%)で検出されました(転移疑いを含めると3症例)。
腫瘍の再発は、19匹中6匹(31.5%)で確認されました。1年生存率は95%、2年生存率は72%、3年生存率は66%であった。ただし腫瘍関連死は少ない。
【臨床兆候】
最も一般的な臨床徴候は直腸腫瘤の脱出(n = 14)であり、次いで血栓症(13)としぶり(9)でした。その他の臨床徴候には、腹部膨満(n = 1)および呼吸困難(1)が含まれていました。臨床徴候の期間中央値は21日(範囲、1〜504日)でした。
【腫瘍の発生部位】
全症例において触診で異常が検出された。20症例中19症例で触知可能な腫瘤がありました。20症例中1症例では直腸へ期の不整として蝕知された。
腫瘍の最大直径の中央値は2cm(範囲、0.2〜5cm)であった。肛門皮接合部からの腫瘍の距離の中央値は1.4cm(範囲、0.5〜8cm)であった。
【画像検査】
20症例中12症例の犬(60%)が胸部画像検査(X線写真またはCT)と腹部画像検査(超音波またはCT)の両方を受けました。4症例は、腹部または胸部の画像診断を受けていませんでした。残りの4症例(20%)は胸部画像検査のみ(n = 1)または腹部画像検査のみ(3)を受けた。
●胸部X線写真;5症例実施中、異常症例無し。
●腹部超音波検査;10症例実施中、5症例に異常所見あり。
リンパ節腫大が3例(1例のみ細胞学的に転移を確認;仙骨リンパ節)
肝臓の嚢胞1、肝臓の変化2、胆嚢の変化1、脾臓の変化1、腎臓の変化1、副腎の変化2、前立腺の変化1
●CT;8症例に実施
小さな肝結節が認められ、細胞診における形質細胞腫転移と一致していた(n = 1)。
肺の多発性病巣は転移の可能性が高いが細胞学的に確認されていない(n = 1)。
疝痛リンパ節(n = 3)または肝リンパ節(2)に異常あり。
【転移】
以上から、細胞学的に転移が確認された症例は2症例(仙骨リンパ節、肝臓の小結節)でした。肺に多発性の病変を形成する1症例は、画像上は転移病巣の可能性が高いと考えられるが、細胞学的には確認されていない。
また腹部超音波とCTを合わせて、疝痛リンパ節(n = 3)と肝リンパ節(2)に異常が確認されているが、細胞学的に評価されているのは上記1例のみである。検査されていないリンパ節に関しては転移の可能性に関しては言及されていない。
続く
パソラボ
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