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第209回 胃癌 その1



第209回 胃癌 その1

今回は胃癌についてです。基本的には胃癌はイヌに発生します。ネコの胃の病変で 「これは胃癌でしょうか?」 とご相談頂くこともありますが、基本的にネコには発生しません。弊社ではネコの胃癌は1例経験しているのみです。ネコでは基本的にリンパ腫など別の疾患の可能性を先ずは考えます。イヌでは発生が稀とはいえ、弊社でも200例以上経験していますので、臨床の場で出会う可能性が極めて低いという状況でもありません。その時に備えておいた方が良いかもしれません。稀に、より限局性のポリープ状の胃癌もありますが、今回は一般的な浸潤性の胃癌のついて記載します。

【胃癌の臨床症状は】
胃癌の症例はほぼ例外なく嘔吐と体重減少が生じます。これらは初診時において既に生じており、嘔吐は進行性です。治療に反応せず嘔吐の頻度が次第に増していきます。私の記憶では、明らかに体重減少が見られないといった症例は非常に例外的であり、通常は明らかな体重減少が生じます。これら2つの症状はほぼ存在すると考えられます。

【病変の広がり、形状】
幽門部に発生することは多いですが、胃のどの部位にも発生します。他の一般的な腫瘍のような結節性腫瘤を形成するというよりも、胃壁全層を重度にびまん性に肥厚させます。胃壁の重度の肥厚は腫瘍の浸潤によるものであるため、超音波所見では5層構造の崩壊・消失が見られます。病変が進行しますと、腹部触診で病変を触知できるようになるかもしれません。病変部の胃壁が硬く重度に肥厚しているため、病変部そのものが変形しない硬い胃になっており、腫瘤として蝕知されます。最初は胃であることに気付かずに、腹腔内巨大腫瘤が存在すると感じるかもしれません。

【胃壁を肥厚させる他の疾患】
胃壁を重度に肥厚させる可能性のある疾患としては、肥厚性胃炎、悪性リンパ腫、その他何らかの炎症病変などが挙げられます。肥厚性胃炎は重度であれば胃壁の厚さが数?pにもなります。粘膜は過形成により重度の肥厚し凹凸も生じます。筋層も平滑筋の腫大などにより肥厚します。しかしながら5層構造は基本的には保たれます。また胃癌の際には胃壁が硬くなるのに比べて、肥厚性胃炎はそこまでではありません。リンパ腫や、その他何らかの炎症病変であっても基本的には胃癌のような硬い病変は形成しません。

【細胞診を考える上での根拠】
ここでの細胞診は動物病院でその場で行うものを意味します。
肥厚性胃炎の場合には粘膜が過形成を起こしており、粘膜内に限局して炎症細胞が浸潤しています。従いましてもし針先が胃粘膜に届いている場合には、粘膜上皮や炎症細胞が採取される可能性があります。針先が筋層内にあれば、何も採取されない可能性があります。リンパ腫で胃壁が肥厚している場合には胃壁全層が多数の腫瘍細胞から構成されていますので、基本的にはどこから採取してもリンパ腫の診断は容易となります。その他何らかの炎症による胃壁の肥厚の場合には様々な程度に炎症細胞が浸潤し、胃壁全層に浸潤している可能性もあります。しかしながら胃の炎症は一般的には粘膜や粘膜下組織側を中心に生じるものです。
上記を考慮し、針の長さ、針を刺している深さなど胃壁のどの深さから細胞を採取しているのか、またそれをコントロールする事が細胞診の評価をする上で不可欠です。場合によっては超音波ガイド下での採材も有効です。

続く

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