第181回 皮下の肥満細胞腫は皮膚肥満細胞腫と別に考える必要があるのか?
皮下の肥満細胞腫は皮膚の肥満細胞腫と別に考える必要があるのか?
「第141回 イヌの肥満細胞腫Patnaikの分類の問題点について(1)」 を先にお読みいただければ分かりやすいかと思いますので、まだの方はそちらからお読みください。
パトニックのグレード分類をするにあたり、組織学的指標がいくつもあり、その沢山の指標を総合判断することで、グレードI〜IIIに分類します。重視する指標はありますが、何を重視するかは個々の症例で異なり、病理医の力量になります。しかしながら、総合判断せずに「病変の深さ」という指標を重視して診断してしまうと、皮下に発生したものは自動的にグレードII ないしはグレードIIIに分類されてしまうことになります。皮下の肥満細胞腫は臨床的に悪性度の比較的低いものが多いという事と矛盾が生じる事になります。
ところが本来するべき総合判断により皮下の肥満細胞腫を分類するとグレードの低いものが多くなり、臨床的な予後と一致するものと考えられます。弊社は総合判断していますので、弊社の診断書であれば、グレードは充分に参考になるかと思いますし、むしろグレードを無視することの方が大きなリスクを感じます。
従いまして弊社の場合、近年言われているような
・皮下の肥満細胞腫は皮膚の肥満細胞腫に含めてはいけない。
・皮下の肥満細胞腫は組織学的gradeと予後一致しない。
といったことはないと考えています。核分裂指数に関しては皮下の肥満細胞腫の報告もありますので、それを参考にすることも良いかと思います。
結論、
弊社が診断している肥満細胞腫であれば皮下に発生したものであっても、グレード分類は参考になります。他社の場合には、参考になるか否かは病理医次第と考えられます。パトニックのグレード分類の中の一つの指標(病変の深さ)を過度に重視したグレード判断が行われ、その結果が臨床と合致しないことが報告されたことで、皮下に発生したものはグレード分類してはいけないという誤解が広まり、定着したものと推測されます。
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