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第180回 イヌの腎細胞癌における予後と関連する臨床的・病理組織学的所見について



イヌの腎細胞癌における予後と関連する臨床的・病理組織学的所見について
Vet Patholgy 2015

腎細胞癌(RCC)はイヌの腎腫瘍の50%を占めるとされています。過去のRCCに関する総説では、転移の有無に関わらず生存期間が短く、腎摘出術は生存期間の延長に有用だと示されてきました。イヌのRCC症例の生存期間に影響を与える臨床的、病理組織学的所見を検討した報告をご紹介します。

こちらの報告では、腎摘出術により治療された70症例のRCCについて、生存期間に関連する臨床的・組織学的因子について調査しました。特にヒトのRCCにおいて予後と関連する病理組織学的所見である組織形態・細胞亜型(特に淡明細胞型、嫌色素性、乳頭状、多房嚢胞性)、核の異型性(Fuhrman核グレードなど)、紡錘形癌細胞成分の有無について着目しています。

<症例の内訳と臨床所見>
*転移所見の有無を除いた以下の項目について、同時に統計解析を実施していた。
・犬 種
 雑種 16例、ラブラドール 15例、ボクサー 3例など
 小型犬 22例、大型犬 32例
・年 齢
 8.7歳(3−15歳)、6歳未満 10例、6歳 60例
・性 別
 オス 40例(去勢オス 31例)
 メス 30例(避妊メス 28例)
・腫瘍サイズ
 7.1cm(2-20.5cm;70症例中21症例で計測)
・臨床症状
 血尿 10例(14%)
 触知可能な腹腔内腫瘤 10例(14%)
 悪液質 6例(9%)
 食欲不振 5例(7%)
・転移所見
 肺 15症例(術前検査 5症例、術後検査 10症例)
 肝臓 3症例、リンパ節 3症例、頚骨(1症例)
 局所転移 3症例、腹膜播種/がん腫症 3症例

 *平均術後8.5ヶ月(1−23ヶ月)で転移や局所再発が観察された。
・術後化学療法
 あり 8症例、なし 45症例、不明 17症例

<統計解析を行った病理組織学的所見>
・核分裂指数(核分裂数/400倍10視野合計)、Fuhrman核グレードなど核異型性
・腫瘍の組織形態(充実性、乳頭状、管状、嚢胞性、多房嚢胞性)、細胞亜型(淡明細胞型、嫌色素性)、紡錘形細胞癌成分など
・腫瘍の浸潤性、偽膜形成、壊死、出血、脈管浸潤

<結果と結論>
・臨床的所見としては、診断時の年齢が6歳未満、血尿・悪液質の臨床症状は予後不良因子となった。術後化学療法の有無は、生存期間には関連しない。
・病理組織学的因子としては、核分裂指数が独立した予後予測因子であり、核分裂指数が31以上の症例では、生存期間が有意に短かった。
・この他の病理組織学的因子としては、淡明細胞型、Fuhrman核グレードなどの核異型性(核サイズ、核多形性を含む)、腫瘍の分化、浸潤性が生存期間の短さと関連していた。
・多房嚢胞性、嫌色素性は有意差はないが、予後が良い傾向にあった。
・紡錘形細胞癌成分の有無は予後と関連しなかった。
・偽膜形成の有無や腫瘍サイズには生存期間との関連性は認められず、脈管浸潤については明らかな関連性は認められなかった。TMN分類に使用される腫瘍サイズについては、計測可能であった症例が少なかったためと述べている。

論文の内容としては、RCCの予後指標として、核分裂指数の重要性を示すとともに、淡明細胞型やFuhrman核グレードなどの核異型性も予後指標になる結果であり、概ねヒトのRCCで重要な組織所見についてはイヌでも同様の結果であると解釈できる。臨床所見としては、診断時の年齢が6歳未満、血尿・悪液質の臨床症状は今後、着目すべきと考えられる。

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