第178回 原発病巣の不明な転移性腫瘍を有する21例の犬について
原発病巣の不明な転移性腫瘍を有する21例の犬について
Veterinary Comparative oncology 2013
転移性病変のみが発見され、かつ原発病巣の特定に至らなかった犬の症例を21例選別し、その臨床的特徴や治療、予後について集計調査したイタリアの興味深い報告をご紹介します。
検査対象として選別された21例はいずれも転移性腫瘍と判断される腫瘍性病変を有し、かつ血液検査、血液生化学的検査、尿検査、病理組織学的検索、全身のCT検査を実施した結果、原発病巣を特定することができなかった症例です。また同時に複数箇所に腫瘤を形成する悪性リンパ腫や組織球肉腫は除外されています。
■疫学
品種;ビーグル(2例)、ジャーマン・シェパード(2例)、ラブラドール・レトリバー(2例)、コルソ犬(2例)、雑種(2例)、など
発生年齢;平均10歳(7 – 15歳)
性別;オス12例(うち去勢済1例)、メス9例(うち避妊済7例)
■発見時の状況
臨床症状
無し;3例 無痛性のリンパ節腫脹(2例)、多発性の無痛性皮下腫瘤(1例)
有り;18例 呼吸困難(7例)、跛行(5例)、うつ病/傾眠/衰弱(2例)、その他(無気力、テネスムス、腹痛、多飲多尿 各1例)
これらの症状は受診の平均14日前(3-150日前)から生じていた
■病変について
転移の個数;10例は1カ所、その他は複数カ所(2-11カ所)
転移の部位;骨、リンパ節、肺、脾臓がもっとも頻繁に発生
種類(17例は腫瘍細胞の分化が低いために免疫染色を実施しています。)
・上皮性腫瘍12例(分類不明;11例、扁平上皮癌;1例)
このうち転移病巣が1カ所であったものは8例
・非上皮性腫瘍 7例(分類不明;3例、線維肉腫;2例、血管肉腫;2例)
このうち転移病巣が1カ所であったものは0例(すべて多発)
・悪性メラノーマ 1例(転移病巣は1カ所)
・肥満細胞腫 1例 (転移病巣は1カ所)
■予後について
平均生存期間;調査後生存中の症例を含めた場合の中央値 30日
生存中の3症例を除いた場合の中央値 12日(1-504日)
3例は診断時に安楽死しています。また治療を実施した7例中5例はその効果が認められなかったと結論しています。報告では転移性腫瘍は原発巣の認識の有無に関わらず予後不良であること、原発巣が分からない場合には効果的な治療法を選択できないために予後を更に不良にしていると述べています。
パソラボ
記事をPDFでダウンロード