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第176回 外科的に切除されたイヌの肥満細胞腫について



外科的に切除されたイヌの肥満細胞腫について
局所再発に関わる因子としての組織学的グレードおよび組織学的マージン

Veterinary and Comparative Oncology , 2013


腫瘍の外科手術による切除が完全であったか否かの評価は組織学的な無腫瘍マージン(腫瘍細胞が認められない正常組織)の評価によってなされる。マージンは局所再発を防ぐために必要であり、人医学の腫瘍学では組織学的安全マージンと認識されているが、獣医学領域ではまだ決定されていない。
外科的に切除され、病理検査によりグレードIIもしくはIIIと分類されたイヌの皮膚肥満細胞腫について、組織学的なマージンの広さ(腫瘍細胞が認められない正常組織の広さ)と再発の関係を明らかにするために検討が行われた。

症例;
 イヌ 73頭、腫瘍の数90(9頭は2個、4頭は3個の腫瘍を有する)
 組織学的グレード
  Patnaik分類 グレードII…55例、グレードIII…51例
  2段階分類  低グレード…51例(すべてPatnaikグレードII)、高グレード…39例(IIの4例とすべてのIII)

結果;
 再発を起こした症例…16/90例
   うち高グレード…14/39例(36%)、低グレード…2/51例(4%)
<高グレード(36%)の方が低グレード(4%)より再発率が高い>
 プレドニゾロン以外の化学療法を受けていた症例は32頭(腫瘍の数は38個)
   薬剤;ビンブラスチン、シクロホスファミド、ロムスチン
   再発を起こした症例16例のうち11例(69%)が化学療法を受けていた。
   再発しなかった症例74例のうち27例(36%)が化学療法を受けていた。
   高グレードでは69%(27/39例)が化学療法を受けており、そのうち10例(37%)が再発を起 こした。
                12例は化学療法なし、4例(25%)再発
   低グレードでは21.5%(11/51例)が化学療法を受け、そのうち1例(9%)が再発を起こした。              
                40例は化学療法なし 1例(2.5%)再発 
     …低グレードでは化学療法の実施率が低い

 低グレードの30%はマージンの広さが3mm以下だったが、いずれも再発は見られなかった。
 再発を起こした低グレードの2例は、マージンの広さが4mmと20mmだった。
 高グレードは組織学的に完全に切除されていても36%が再発を起こした。    
 <組織学的なマージンの広さと再発に関連は認められない>

 核分裂指数、腫瘍の大きさに関しても、再発との関連は認められなかった。

・高グレード肥満細胞腫は低グレードより再発率が高い(高グレード36%、低グレード4%)
・組織学的に検査されたマージンの広さと再発の起こりやすさに関連は認められない。
  低グレードはマージンが最小であっても再発率が低い
低グレードは最小限のマージンで長期の局所制御が可能である。
高グレードではマージンが完全であっても再発率が高い→化学療法や放射線など、追加治療の必要性

※注意点として、この報告では低グレード/高グレードとして比較しているが、Patnaik分類のグレードIは含まれていない。
 (もし仮にグレードIも含めて評価した場合には、低グレードの再発率はもっと低くなることが考えられる)
また、比較しているのは局所再発のみであり、リンパ節や遠隔転移に関する情報がない。

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